2020年02月17日

庭先で仕込む醤油の話

中川村の仲間と、毎年、醤油を庭先で仕込んでいます。

今年度は、1升瓶 30~ 40本ほどになる量を、7家族で仕込みました。

醤油作りというと、皆さんはどんなイメージを、お持ちですか?

例えば、古くて大きな蔵に、人の背丈の2~3倍以上はありそうな大きい杉樽があって、たっぷり醤油が入っていて、大きな櫂(かい)でねじり鉢巻きをした蔵人がぐるぐる醤油をかき回してる・・・なんてイメージ?

あるいは、近代的な工場、大きなタンクが並び、製造ラインでペットボトルに次々醤油が詰められていく・・・なんてイメージの方も、いるかもしれませんね。

私たちの醤油作りは、やり方が全く違います。

 

私たちが主に使う道具は4つ。

①60リットルのプラスチック製の樽(たる)

②樽を置くビニールハウス

③ボウル

④ゴムベラ

材料はたったの3つ。

①醤油こうじ

②塩

③水

なので、家庭の庭先とかでできちゃうんです。

醤油の仕込みは春先に始まります。

ちなみに、今年搾った醤油は去年の3月30日に仕込みました。

醤油こうじは岐阜、美濃加茂・浅野屋さんから
塩は地元のスーパーで購入
水はおとなり飯島町の名水「越百の水」をくんできました。

はじめに、こうじと塩を台の上に広げ、手でよく擦り合わせます(塩切り)。
ポイントは楽しくやること、おいしくなあれ~おいしくなあれ~と唱える。

よくなじんだところで、樽へ入れます。
水を入れます。

網戸みたいな通気性の良いものでふたをして、完了!

最近注目の、こうじの美肌効果?
終わった後は、手タレなみのすべすべお肌になりテンションあがります(笑)。

仕込んだものを、「もろみ」といいます。

管理は、「天地返し」「梅雨入り前後に醤油ハウスへ移動」「たまにもろみの様子をみる」ことだけ

毎月1回ペースでもろみの上と下を入れ替える「天地返し」を行います。

梅雨入り前に、日陰の涼しい場所から、木工作家の鉄平くん作☆もろみ専用手づくりビニールハウスに 移動。

これは初め驚いたのですが、夏場の直射日光がガンガンに当たるような環境へ置くんです。
しかも60度以上になるような、ビニールハウスの中へ。
温度をかけることで、発酵が進みます。

この間も月一で天地返しをしつつ、カビが出てないかな?とか、発酵が進みすぎていないかな?とか様子を見ます。
9月初め頃、もろみの様子を見て、日陰に移動するか、そのままハウス内でもう少し発酵をかけるか、を選びます。

醤油搾りは2月頃

醤油は10月頃から搾ることができます。

うちのグループは、毎年、年明けの2月中旬頃搾っています。

メンバーに農家が多いので、農閑期に。

醤油を搾ってくれるのは、長野の南、阿南町在住のトキさん。

醤油搾りの日。

朝イチで、トキさんが醤油を搾る「フネ 」という道具や、釜、かまどを車に積んで、やってきます。

「フネ」のイメージは小さな湯舟。底に一か所、醤油の流れ出る穴があいていて、上から圧がかかると醤油が流れ出てきます。

フネ、かまど、釜を設置し、お湯を沸かし始めたところで、はじまりの会。

今年のもろみの状態とか、最近の手作り醤油事情、こうじ事情などをトキさんが話してくれます。
トキさんこそが、伊那谷に手作り醤油の輪を広げたキーマンなのです。

そのことについては、またあとで。

「フネ」

搾りから瓶詰めまで

搾りから瓶詰めまでの手順は

①もろみをお湯で溶かして、塩分濃度16パーセントくらいに調整

②搾り袋へいれて、フネの中で上から圧をかけながら醤油を搾る

③ひとり1リットルくらい、「生醤油」として搾りたて、加熱しないものを瓶詰め。

④残りは釜で火入れして殺菌

⑤冷まして樽へ戻し、1週間程度「オリ引き」(醤油に混ざった固形物、オリを沈める)

⑥瓶詰め

搾り袋へお湯で溶かしたもろみを入れる。

年に1度の醤油祭り

醤油搾りは、祭り。
醤油を搾るフネから 醤油が流れ出てきた瞬間は、毎年 わーっという歓声があがります。
子ども達は「ドリンク醤油」状態 笑 。
手で醤油をすくってガブガブ飲んでいます。
今日ぐらい、「塩分とりすぎ」とか言いっこナシ。
お昼ご飯には 一つ釜の飯を みんなで食べます。 シンプル・イズ・ベスト。
醤油をかけるだけの醤油ご飯が最高!
各お家から持ってくる 鰹節・豆腐・たまごをのせて食べるのもおいしい。
お湯を沸かすかまどの火で、丸ごと1本ネギを焼いて、焦げた皮を豪快にむき、トロリとした焼きネギに醤油をつけて食べる。
中川班恒例の楽しみ。
この日だけしか、滅多に会えない仲間もいたりして、この1年の話が尽きません。

荻原忠重さんのこと

さて、私たちの醬油作りは、元は、信州新町の荻原忠重さんという方が、50年以上前に開発したやり方に学んでいます。

「家庭でできる醤油作り」にこだわった荻原さん。

荻原さんの遺した言葉

「醤油は生き物」

「太陽と自然の恵みを受けて育つ」

「作業はやさしく」=優しく、易しく

醤油の輪を広げたトキさんは、荻原さんに師事した岩崎さんという方から、醤油作りを教わっています。

トキさんが毎年言うこと。

「これは、お金を払えばできる”醤油作りのワークショップ”とかじゃなくて、”生活の中の一部としての醤油作り”って思ってもらえたら、嬉しい」

「手をかけすぎず、ほったらかしにしすぎず、もろみの声をきいてみてください」

きっとこれは荻原さんが目指していたことなんだろうな。

だけど

この、スーパーに行けば簡単に醤油が手に入る時代に
なぜ、荻原さんはあえて「家庭でできる醤油作り」にこだわったのかな?

その先に見ていたものはなんだったのかな?

そんな問いが私の中で浮かびます。

原材料の出所が明らかで、添加物が入っていなくて、安心でおいしい醤油を使いたい、という方のため?

それもあるだろうとおもいます。

私、なんで醤油作りを続けているのかな?

こんなプレミアムな醤油があるのに

大島家ではフツーに他の醤油を買ってきたりします。

それは、それぞれ人の好みがあるので。いいんです。

だから年によっては醤油を使い切れずに人様に差し上げる時もあります。

でも、作ることはやめない。

なんで?

答えというわけではありませんが、
8年醤油を作ってきて私が感じることは、

醤油を軸に、バラバラな人が繋がる、というのが素敵だなっていうこと。

醤油の周りに人が集まって、おいしいとか久しぶりとか言ってる。

今年の天気は夏場暑かったから、もろみが焦げたのかな。
なんて振り返りをしている。

それから、同じ樽で作った醤油を、家に持ち帰って
それぞれの家庭で煮物の味付けに使ったり、焼き魚にかけたりしている。

なんかこれ、最高じゃない?
って思うから。

・・・・・・

さて

今年「も」朝から雨模様。
搾りの日は、なぜかわりといつも雨模様なんです。

子どもたちが雨に嬉々として打たれ、水溜まりでキャーキャー泥をはねかして、全身びしょぬれなのも見慣れた風景…(笑)

今日くらい、好きなように楽しんだら?

みたいな。

子どもも、大人も。

今年も、美味しい醤油ができました✨

 

 

 

 

 

 

同期完了


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